中国の伝統的な手漉き紙ー涇県宣紙
宣紙(せんし)は、中国安徽省の宣州(宣城、現在の涇県)で産出する書画紙を指す。 この地域には、良質な宣紙の原料になる青檀 (セイタン) の木が自生する。この青檀の樹皮を主原料に、藁を加えて作られた紙が現在に続く宣紙のもとである。撥墨の佳さを求め、墨の持ち味、墨色の変化をよりよく表現できるように長年に渡る研究が続けられた結果開発された。
泾県地区には多くの紙工場や家庭の工房がある。この地域では、効率と経済性を追求するために、機械を導入し、原料の漂白に工業用アルカリを使用している場合が多い。伝統的な工程に従えば、基本的な原料の処理に、少なくとも一年以上の時間がかかる。化学原料の使用により、大幅に時間が短縮できるのだ。さらに、ネリの工程において、伝統的な手法は野生のキウイを使うのだが、現在は化学材料で置き換えられている。このように、効率性と経済の利益を追求したことで、紙の寿命と繊維の靭性も弱くなってきている。
また、宣伝と観光の目的で、泾県には宣紙博物館が建設された。ここでは、製紙工程を展示し、紙漉きを体験することができるが、単なるデモンストレーションになってしまっている。